中国人の自由を求める声は、ますます強くなってきたと思えます。その背景にある最大の要因は、経済情勢の変化でしょう。
ここに来てさすがに、
「中国の(不動産)バブルの崩壊は時間の問題か?」という論調はずいぶん前から主流になってきましたし、見方によっては、「バブル崩壊は、すでに起きている」という声もあります。
確かに、株価の上海総合指数を見ても、ピーク時から既に20〜25%程度下落していますし、あちらこちらの大都市で、
「購入した2軒目のマンションの価格が、既に3割以上下落して、ローンで購入した中産階級の人々が、大挙して不動産屋に押しかけ、一触即発の状態になっている」という話は、日本の新聞にこそ出ませんが、現地の駐在員筋からはよく聞く話だそうです。
中国の金融当局が、
「日本のバブル潰しの失敗(日銀・旧大蔵省による)を詳細に研究している」
というのはよく聞く話で、「何とかソフトランディングさせよう」とやっきになっていますから、20年前の日本のような"極端な腰折れ"という形では現れないかもしれません。
しかし・・・
「中国の経済成長は、終わりを迎えつつある(すでに終わった)」
というのは、世界に共通した認識でしょう。
問題はそのあとです。
「最初の円切り上げ(1970年)を渋ったために引き起こされた大インフレ」
「二度のオイルショック(1973,1978年)」
「バブルの発生と崩壊(80年代後半)」
さらに、
「先進国の仲間入り(IMF(国際通貨基金)&OECD(経済開発協力機構)に加盟(1964年)をしたときの振舞い方」
など、様々な試練と経験を経てきた日本の眼から観ると、
「中国政府の人達が、明らかに気がついていないことがある」
ということが、見てとれます。
中国政府は、
「これから始まる景気後退は、一種の循環的なものであって、調整が終われば、再び成長軌道に乗せることができる」
と思っている節があります。
それに対してはっきりと断言できることがあります。それは何かと言うと、
「今のままであれば、彼らには、再び(高度)成長はやってこない」
ということです。
ここまでは、日本もかつて、来たことがあるのです。
ある意味で、この30年近くの間、中国がやってきたことは、かつての高度成長時代の日本とそっくりでした。
一応、自由主義経済ではありましたが、かつての「日本株式会社」同様、国を挙げて、「中国株式会社」をつくり、(何しろ未だに国営企業がGDPの半分以上を産み出しているのですから、かつての日本以上です)、国策で経済成長を推進してきました。
経済の発展段階が低い間は、あるいは賃金が低い間は、このやり方でいけるのです。
賃金が日本の数十分の一(百分の一)であった間は、シノモノ難しいことを言わずに、大した"創意工夫"をしなくても、国の保証でドーンと投資し、安い賃金を使って押していけば、日本を始め世界中から工場を集め、それを使って他国の商品を打ち破ることができるのです。
それによって、人々は豊かになります。(というより、「人民を豊かにすることができる」という一点のみが、今の中国共産党の唯一の存在根拠であり、この一点が実現できなくなったら、あっという間に共産党は放り出されるでしょう。)
そうやって、賃金は確実に上昇します。しかし、それによって、このやり方による成長は必ず壁にぶつかり、そのままでは、必ず一旦、経済成長は終焉を迎えるようになっているのです。
かつてはそうやって、中国は、アメリカや日本からマーケットを奪ってきました。しかし、賃金が(少なくとも沿海地域では)ここまで上昇してくると、その手が通用しなくなり、今度は自分達が、ベトナムなど、遅れてやってきた国々に、「もっと安い賃金によって、マーケットを奪われる」という同じ状況におかれることになるのです。
そこまで、経済の発展段階が進んできたときに、「それでも経済成長を続けたい」と願ったならば、必ずやらなければならないことがあります。
それが何かと言うと、アダム・スミス霊が言うように、「情報の自由化」なのです。
「国の保証でドーンと投資し、安い賃金で競争相手を打ち負かす」
という、日本株式会社(or中国株式会社)の単純なやり方は、やがてどこかで壁にぶつからざるを得ません。
賃金が上昇してきた時点でアウトです。
その先もさらに、経済成長をしたかったら、
「本当の意味で、経営者(企業)に自由を与え、創意工夫による"価値の創造"を促す」ことをやらない限り、その先の成長は、もう無いのです。
経済の発展段階が、ある一定規模を超えたら、「自由な経済活動」や「自由な情報のやり取り」を認めない限り、その先の経済発展は、100%無いと考えます。
「自由を制限しながら、なおかつ、経済発展が続けられる」
というのは、ここから先の世界では、まさに"幻想"であり、"妄想"であるのですが、このことを中国政府は、これから、嫌というほど"思い知らされる"ことになるでしょう。
中国政府には、もはや二つの道しか残されていません。
一つは、「これからも自由(情報のやり取り)を制限して、経済が衰退していく」という道です。
しかし、ひとたび豊かさを味わってしまった国民が、昔の生活水準に戻っていくことなど許してくれるはずもなく、「豊かさを提供できることが、自分達の唯一の正当性の根拠」であることを一番良く理解している共産党幹部は、それが出来なくなった瞬間に、「自分達の首が危なくなる」ことを一番熟知している人達でもあるでしょう。
もう一つの道は、「経済成長を続けていくためには、情報の自由を認めざるを得ない」ということですが、一旦、「情報の自由」を認めたら、エジプトやリビアのように、一気に自由主義国家、民主主義国家に変わらざるを得なくなるでしょう。
これが実は、アダム・スミス霊やドラッカー霊の言った、「携帯電話が核ミサイルに勝つ」ということの意味です。
また、「日本に未来はなく、一旦どん底に落ちて、植民地化されるだろう」と予言した西郷隆盛霊の言葉に対する質問に答えて、総裁先生がおっしゃった、「でも彼は、経済のことは知らないからね」という御言葉の真意なのです。
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